TECHNICAL REFERENCE / GXA-DC-MAN-00-09
TECHNICAL REFERENCE / FULL EDITION

データセンター開発マニュアル

コンテナ型・モジュール型データセンターを、案件発掘から運用移行まで再現可能な手順に落とした開発標準です。全9部。

DOCGXA-DC-MAN-00/09
REV0.1(公開版)
SCOPEGPU高密度・2MW級ユニット
ISSUED BYグリーンXアライアンス

00本資料について

箱を建てる手順書ではなく、判断を誤らないための手順書です。データセンター開発で工程と費用を壊すのは、施工の巧拙ではなく、設計を固定する前に確認しなかった事項です。

案件発掘から運用移行までを9部で構成しています。各章には準拠する公的文書を明記し、公的文書が存在しない領域は自社の判断として区別しています。

読み方の記号は二つだけです。

  • 要検証 案件ごとに所轄官庁・メーカー・電力会社への確認が必須の事項。ここを確認せずに設計を固定してはいけません。
  • A1 準拠する公的文書。記号は附属Bに対応します。

数値は目安であり、案件ごとに実測値・実納期で置き換える前提で記載しています。

PART 0 / 総則

0-1フェーズゲート

開発全体を8つのゲートで管理します。ゲート未通過での次フェーズ着手を認めない、というのが本書の背骨です。

ゲート名称成立条件代表成果物
G0案件登録用地・電力・需要のいずれかに実体がある案件登録票
G1事業性仮判定概算P/Lで回収年数が基準内。需要確度が一定以上初期事業性検討書
G2電力・用地の確度確保系統の契約申込みが受理された/用地の押さえ完了接続検討回答書、用地関係書類
G3基本設計・許認可見通し基本設計確定、建築物該当性の決着、行政協議に重大障害なし基本設計書、許認可ロードマップ
G4投資決定(FID)資金調達目処、需要の確保最終事業計画、契約一式
G5着工発注完了、工程・安全体制確立実行工程表
G6統合・受入電力・冷却・ネットワークの受入試験合格コミッショニング報告書
G7運用移行運用体制・SLA・監視の稼働確認運用引継書
なぜG2を「契約申込み」に置くか

系統の事前相談の段階では、容量は一切確保されません。順番が発生するのは契約申込みの受理時点です。事前相談の回答をもって「電力の目処が立った」と判断し、次フェーズの費用を投じるのが、この事業で最も多い失敗です。

0-2関係者と役割

案件ごとに下表を埋め、契約書に添付します。「誰の担当でもない作業」を残さないことが目的です。

領域主担当支援
事前調査(通信線・電力線・行政・顧客)開発支援者事業主
各種契約(用地・電力・通信・工事)事業主/SPC開発支援者
機器調達交渉開発支援者事業主
土木・設置・電気工事事業主/EPC開発支援者
コンテナ内接続・インテグレーション開発支援者EPC
受入試験・引渡し開発支援者+運営者EPC
運用・保守運営者開発支援者

役割の配分は案件により変わります。重要なのは配分そのものではなく、基本設計に入る前に配分が文書で確定していることです。

PART 1 / 事業企画

1-1需要起点の設計

箱を建ててから客を探さない

データセンターは、建ててから需要を探すには初期投資が大きすぎます。需要(オフテイク)の確度を先に上げ、その確度に応じて投資判断を段階化します。

需要確度の格付け

格付状態許容されるフェーズ
A契約締結済み(容量・期間・単価が確定)G4(投資決定)に進める
BLOI/MOU締結。条件は概ね合意G2〜G3まで。FIDは不可
C具体的な引合いあり。条件は未交渉G1まで
D市場見込みのみ案件登録のみ

FIDにはA、G2進行にはB以上を要件とします。この線引きを緩めると、系統の工事費負担金や長納期品の発注が、需要の裏付けなしに走り出します。

需要側のデューデリジェンス

  • 支払能力と与信。長期契約ほど相手方の存続リスクが効きます
  • 契約期間と、途中解約時の違約条項
  • 電力単価変動の転嫁可否。ここを固定単価で受けると事業者側が電力リスクを丸抱えします
  • 機器の所有者(顧客持込みか、当方調達か)と、その場合の保険・保守責任

1-2規模決定ロジック

実務では、受電容量から降りる計算より、顧客のGPU要求台数から必要受電容量を求める逆算の方が多くなります。

GPU台数 ÷ 1サーバあたりGPU数 = サーバ台数
サーバ台数 × 1台あたり消費電力 + ネットワーク・管理機器 = IT負荷
IT負荷 × ピークPUE = 必要受電電力

計算例

項目
顧客要求 GPU台数1,000基
1サーバあたり8基として125台
1台あたり10kWとして1,250 kW
ネットワーク・管理機器を加算約1,300 kW
ピークPUE 1.45約1,885 kW
契約受電電力2,000 kW(2MWユニット1基)

1台あたり消費電力はGPU世代で大きく変わるため、必ず顧客の機器仕様から積み上げます 要検証

段階投資の設計

需要は段階的に立ち上がるのが通常です。2MW級のモジュールを単位とし、需要の確度に応じてユニットを追加する構成にします。ただし受変電・基礎・配管・通信引込は、後から容量を増やすのが困難またはきわめて高価なため、最終規模を見込んで先行整備するか否かを、G3で決めます。

PART 2 / 用地・電力・通信

2-1候補地スクリーニング

現地に行く前に、机上で落とせる候補地を落とします。7軸で評価します。

確認事項足切り条件の例
電力最寄変電所までの距離、系統の空き容量見通し、受電電圧増強時期の見通しが示されない
通信バックボーンまでの距離、キャリアの引込可否、2ルート確保の可否単一ルートしか取れない
上水/井水の可否、水量、排水先水冷方式が必須なのに水源がない
地盤・地形地耐力、造成量、搬入路の勾配と幅員大型車両が進入できない
災害ハザードマップ(浸水・土砂・津波)、活断層、積雪対策可能範囲を超える浸水深
行政用途地域、開発許可の要否、誘致姿勢、支援制度用途地域上、立地が困難
近隣住宅までの距離、既存の反対運動、騒音の受け手組織的な反対の兆候

建築物該当性の運用は特定行政庁ごとに差がありうるため、この段階で所轄に照会しておきます4-2)。後で判明すると、レイアウトごとやり直しになります。

2-2系統連系プロセス B1

本書の中核です。データセンターは需要設備であり、発電設備とは手続きの流れが異なります。

手続きの段階

段階何が得られるか容量の確保
事前相談系統の状況、大まかな可否感なし
接続検討連系可否、工事概要、概算工事費、所要工期の回答なし
契約申込み手続き上の順番ここで発生
接続契約連系の確定確定
接続検討回答の性質を誤解しない

広域機関の説明では、接続検討回答は連系・工事費・工期を確約するものではないとされています。回答後・契約申込み前に他の系統連系希望者が契約申込みを行うと系統条件が変わり、再検討が必要になる場合があります。再検討には検討料と追加の検討期間を要します。また契約申込み後の現地調査や地権者との協議により、工事費や工期が変動する可能性があるとされています。

加えて、接続検討回答書には有効期限が設けられています。期限を超えて契約申込みを行う場合は、再度の接続検討が必要になります。事前相談から契約申込みまでを間延びさせると、検討をやり直すことになります。

申込み前に確定させておくこと

  • 契約受電電力(後で増やすには手続きをやり直す)
  • 受電希望日(工程全体の起点になる)
  • 需給契約の相手方=小売電気事業者(2-3
  • 申込主体(SPC設立前か後か。名義変更の手間を考慮する)

様式は広域機関および各一般送配電事業者が公開しています B1。記載例も併せて公開されているため、初回申込みでも様式そのものは障害になりません。障害になるのは、上記の前提条件が固まっていないことです。

2-3小売電気事業者の手当て

需給契約の相手方が決まらないと、系統側の手続きが進みません。用地と系統だけを追いかけて、小売の手当てを後回しにするのが典型的な詰まり方です。

交渉論点要点
単価と料金体系基本料金・従量料金の構成。DCは負荷率が高く、一般的な想定と挙動が異なる
契約電力とデマンド立上げ期は実負荷が低い。契約電力の階段的な設定が可能か
インバランス計画値同時同量の責任分担
契約期間長期固定と市場連動のバランス。顧客への転嫁条項と整合させる
非化石価値顧客が再エネ要件を持つ場合、証書の調達方法を含めて設計する

2-4電力調達スキーム

方式長所留意点
系統からの調達設備投資が小さい市場価格変動の影響を直接受ける
オンサイト自家発・自家消費系統制約を一部回避できる用地面積、設備投資、保安体制
オフサイトPPA長期の価格固定と再エネ性を両立契約が複雑。相手方の与信と期間
非化石証書等の調達柔軟顧客が求める要件(追加性等)を満たすか確認

脱炭素電源の近くにデータセンターを立地させる政策的な後押しがあり、地域によっては支援制度と組み合わせられます E2

2-5用地の押さえ方

  • 権利関係の確認:所有者、共有、抵当、借地、相続未了の有無
  • 地目と転用:農地・山林の場合、転用手続きの可否と期間を先に確認する
  • 押さえ方の段階:秘密保持 → 覚書(優先交渉権・期限付き)→ 売買予約または賃貸借
  • 期限管理:覚書の有効期限と、系統手続きの所要期間を突き合わせる。系統が長引いて用地の押さえが切れる、が最も避けたい事態
  • 隣接地の将来利用(拡張余地と、逆に迷惑施設が来るリスク)

2-6通信の引込

電力に比べて軽視されがちですが、リードタイムは長く、後から短縮できません。

  • バックボーンまでの距離と、引込工事の概算費用・期間をキャリアに照会する
  • 物理的に別ルートの2経路を確保する。同一管路内の2回線は冗長ではない
  • IXまでの距離と、レイテンシ要件(用途による)
  • 暗ファイバの調達可否、将来の増速余地
  • 引込口の位置を、コンテナ配置計画と同時に決める(5-3の責任分界点)

PART 3 / 許認可・行政

3-1自治体調整と立地協定

接触の順序

企業誘致の担当部署から入り、そこを経由して建築・消防・土木・環境の各部署に接続してもらうのが円滑です。個別部署に直接照会を重ねると、自治体内部で情報が分断され、後で方針が食い違います。

初回説明資料の構成

  • 事業の概要と規模(受電容量、敷地面積、ユニット数)
  • 地域への効果:雇用、税収、地元発注、災害時の役割
  • 懸念への先回り:騒音、水利用、景観、交通量、電力の逼迫
  • スケジュールと、自治体に依頼したい事項

立地協定の論点

雇用計画、地元調達、固定資産税の減免、用地の取得条件、環境配慮、操業開始時期、未達時の取扱い。達成できない数値を協定に書かないことが、長期的な信頼につながります。

国の支援制度は、データセンターの地方立地を後押しする方向で継続しています E1E2。補助対象費目は積算の分類設計にも参考になります。

3-2法規制一覧

法令論点備考
建築基準法建築物該当性、用途地域、建築確認A1 詳細は4-2
都市計画法開発許可の要否、市街化調整区域の扱い面積要件
農地法・森林法転用許可、林地開発許可期間が長い
消防法消防用設備、危険物(発電機燃料)、蓄電池F2要検証
電気事業法自家用電気工作物、保安規程、主任技術者F1
省エネ・非化石転換法データセンター業としての定期報告、PUEC1C2 運用フェーズ
騒音規制法・振動規制法特定施設の届出、規制基準発電機・冷却設備
水質汚濁防止法・下水道法排水の扱い水冷方式の場合
景観条例等色彩、高さ、緑化自治体ごとに差が大きい

3-3許認可ロードマップ

案件ごとに、必要な手続きを洗い出し、所要期間と前後関係を1枚の表にします。ポイントは3つです。

  • 並行処理できるものとできないものを分ける。転用許可が下りないと開発許可が進まない、といった依存関係を明示する
  • 各手続きの事前相談期間を工程に含める。申請書を出してからの標準処理期間だけを見ると、実際の2倍近くずれる
  • 建築物該当性の判断(4-2)を最上流に置く。ここの結論で、必要な手続きの数そのものが変わる

3-4近隣・住民対応

論点実態説明の方針
騒音冷却設備と発電機試運転が主。定常運転時は冷却設備敷地境界での測定値を、着工前の暗騒音と対で示す(6-2
冷却方式によっては相当量を使用使用量を数値で示す。水を使わない方式を選んだ場合はその旨を明示
電力の逼迫地域の電力を奪うという懸念が出やすい系統手続きを経て容量を確保していること、増強負担の考え方を説明する
景観コンテナと冷却設備の外観色彩計画、植栽、配置による遮蔽
交通工事期間中の車両経路と時間帯を事前に提示する
雇用無人運用のため直接雇用は限定的過大な雇用数を約束しない。保守・警備・地元発注を含めた実像で説明する

無人運用を前提とする以上、雇用効果を過大に語ると、後で必ず信頼を失います。地域への効果は、税収・地元発注・災害時の役割で正直に組み立てます。

ここから先は申請制です

第4部以降 / 設計・調達建設・統合試験・運用・リスク管理

ここまでの第0部から第3部は、案件を進めるか否かを判断するための部です。第4部以降は、実際に設計し、発注し、受け入れるための手順に入ります。内容を確認のうえ、閲覧パスワードをお送りします。

第4部 設計

  • 最初に決める三つ/設計基本方針
  • 建築物該当性の判断(国交省通知の解釈)
  • 電気設備/冷却設計/高密度ラック
  • ネットワーク/物理セキュリティ・防災

第5部 調達・建設

  • 調達戦略/IT機器調達
  • 三つの責任分界点/工程管理/安全品質

第6部 統合・試験

  • インテグレーションの順序
  • コミッショニング5段階と試験項目11件
  • 引渡書類チェックリスト

第7部 運用/第9部 リスク管理

  • 運用体制/SLA/保守/法定報告
  • リスク登録簿
STEP 1

閲覧パスワードを申請する

内容を確認のうえ、当社の判断でパスワードをメールにてお送りします。同業他社さまからのお申し込みはお断りする場合があります。

STEP 2

パスワードをお持ちの方

お送りしたパスワードを入力してください。ハイフンは省略できます。このページ内に第4部以降が表示されます。

本資料の位置づけ:当社の開発標準の一部を公開するものです。記載の数値は目安であり、案件ごとに実測値・実納期で置き換える前提です。個別案件への適用にあたっては、所轄官庁への確認を前提とします。本資料は一般的な情報提供であり、法務・税務・投資・技術の個別助言ではありません。無断での再配布・転載はご遠慮ください。

附属

A案件ごとの確認事項

本書で 要検証 としたものの一覧です。案件ごとにこの表を埋めてから設計を確定します。いずれも所轄官庁・メーカー・電力会社への確認が必須の事項であり、確認せずに設計を固定してはいけません。

#事項確認先影響範囲
1建築物該当性(電気室・CDU同居、モジュール連結)所轄特定行政庁工程全体・レイアウト
2消防法の適用(消防用設備、コンテナの扱い)所轄消防本部設備費・工程
3燃料タンクの危険物規制所轄消防本部発電機備蓄時間
4電気主任技術者の選任要件・外部委託の可否産業保安監督部運用体制・費用
5特殊車両通行許可の要否と所要期間道路管理者据付時期
6ラック実重量と床・基礎の許容荷重機器メーカー/構造設計基礎設計
7DLCの熱捕捉率と残熱の空調容量機器メーカー空調容量
8冷却喪失時の温度上昇率設計計算+実測保安電源の範囲
9リチウムイオン蓄電池の設置・消防要件所轄消防本部UPS方式
10長納期品の実納期各メーカー工程全体
11ファブリックの配線長制約機器メーカーラックレイアウト
12水利用の可否・水量・排水条件自治体・水道事業者冷却方式

B準拠公的文書

本書の各章が根拠とする文書の一覧です。いずれも一次資料に直接リンクしています。改訂されることがあるため、実務では必ず発行元の最新版をご確認ください。

公的機関の文書

記号文書発行最終確認
A1 コンテナ型データセンタに係る建築基準法の取扱いについて(技術的助言)
国住指第4933号/平成23年3月25日
国土交通省2026-08
B1 系統アクセスに関する手続きについて
データセンターは需要設備側のフロー
電力広域的運営推進機関2026-08
B2 系統アクセス手続きで用いる様式集
事前相談申込書、接続検討要否確認依頼書ほか
電力広域的運営推進機関2026-08
C1 省エネ・非化石転換法 関連ガイドライン・支援ツール
データセンター業に係る措置のガイドライン(2026年4月策定)を含む
資源エネルギー庁2026-08
C2 工場・事業場向け 省エネ法の措置
データセンター業のベンチマーク制度(指標はPUE)
資源エネルギー庁2026-08
E1 デジタルインフラ整備に関する施策
立地補助の公募要領は補助対象費目の分類設計に有用
経済産業省2026-08

法令(e-Gov法令検索)

記号法令本書で扱う論点最終確認
F1 電気事業法 自家用電気工作物、保安規程、電気主任技術者の選任2026-08
F2 消防法 消防用設備、危険物(非常用発電機の燃料)、蓄電池2026-08
F3 建築基準法 第2条第1号の建築物の定義(3-22026-08

民間標準

記号文書発行最終確認
G1 データセンター ファシリティ スタンダード
ティア1〜4の基準項目・推奨項目
日本データセンター協会2026-08
G2 PUE計測・計算方法に関するガイドライン 日本データセンター協会2026-08

日本データセンター協会の資料は有償頒布です。本書では条文・表の転載を行わず、要旨の参照にとどめています。ダイジェスト版は同協会サイトで無償公開されています。

用地・電力の確度評価から、設計・調達・受入試験の管理まで。本書の手順に沿った開発支援をご相談いただけます。

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